アブレーションなどによる放射線皮膚潰瘍がFDAのHPに掲載され,ICRPから「ICRP Publication 85 IVRにおける放射線傷害の回避」の出版,更に医療被ばくの危険がTV報道されている現状にも関わらず,このようなIVRを行う施設が線量計を持たなければいけないという社会認識がまだありません.このような状況の中でIVRを行う施設での線量計の購入などは非常に困難です.すでに線量計を所有している施設でも校正費用を捻出することも非常に難しい状況にあります. ご存知のように線量計には,エネルギー依存性があります.60Co137Csで校正された線量計で,IVRで使用される低エネルギー放射線(50~120kV)を測定すると10~40%の過小評価となります.正しく校正することによって,被ばく低減に利用でき,不幸にして放射線障害が発生した場合も被ばく線量評価が正しくできれば,治療対策ができるため放射線障害を最小にすることが可能となります. ガイダンスレベルなどによる医療被ばくの監視は,X線診断における品質保証プログラムに必要欠くべからざる一部であると勧告されています.
医療被ばくの監視を行うためには,診断領域X線エネルギーで校正された線量計で測定することによって正しい線量値が測定できます.「診断領域線量計標準センター」で相互比較を行うことで国内における各装置(X線CT,診断X線装置,IVR装置)及び撮影部位ごとにおける線量値の比較が可能となります.それによって各装置および各撮影部位の撮影線量の最適化(撮影線量と画質)が可能となります.英国IPSMは,施設間の撮影線量を比較することによって英国での医療被ばく線量低減を達成しました. 学会が運営する「診断領域線量計標準センター」では,電離箱線量計および半導体検出器の校正を行っており,また一部の施設ではサーベイメータの校正も行っております.線量計の相互比較試験を行うことにより被ばく管理や医療被ばく低減にご活用くださるようお願いいたします.
なお,サーベイメータの校正をご希望されるご施設は,使用するセンターへお問い合せ,ご相談をお願いいたします.
診断領域線量計標準センター利用基準
1.利用者は下記の内容を診断領域線量計標準センター(以下センターとする)に事前連絡すること.
●依頼施設名・住所
●依頼者氏名・連絡先(電話番号・FAX番号・メールアドレス)など
●当日来られる人の氏名・連絡先(電話番号・FAX番号・メールアドレス)など
●線量計の型式
●電離箱の型式並びに容積
●校正データの有無
●相互比較希望日(複数日を記入:第三候補日まで)
上記を記載し,郵送・電子メールの件名に必ず,「診断領域線量計標準センター利用依頼の件」などと明記すること.
2.利用者は,直接、線量計を搬入すること(宅急便など一切不可).また,搬入に関わる旅費・搬入費用などは
すべて利用者が負担すること.
3.利用者は,センター線量計と持ち込み線量計との線量相互比較作業に立ち会うこと.その際,個人線量計を
持参し装着して作業を行うこと.
4.線量計は,事前に動作チェック(電池切れ,コネクター接触不良,リーク,予備照射など)を行うこと.
また,電池式の場合は予備の電池を用意すること.
5.線量計を校正したデータがある場合は,古いデータでも持参すること(コピー可).
6.センター線量計と持ち込み線量計との線量比較作業は無償とすること.
7.センターは,センター線量計と持ち込み線量計との相互比較書(試験成績書)を作成し利用者に提供すること.
8.センター利用は,各センターの事情により事前通知することなく延期および中断することがある.
9.センター利用に関連する事項に起因または関連して生じた損害についてセンターおよび日本放射線技術学会は,
一切の賠償責任を負わないものとする.
追記
・上記,利用基準1.~8.は各センターの事情により若干変更されるため利用者は使用するセンターに詳細を事前に
確認すること.
・利用基準は,日本放射線技術学会と各センターとの協議により改定できるものとする.
この利用基準は平成17年4月1日より発行する.